ぎっくり腰ってなに?
ぎっくり腰は、何かのきっかけで急激に(ギクッと)発症した腰痛のことで、医学的な診断名ではなく一般的な名称です。
ですから、ぎっくり腰といっても人によって傷めた場所は違います。とはいっても傷めやすい場所の傾向はあります。
よく「重いものを持ったとき」と表現されますが、ぎっくり腰で来院した方に伺うと、たいてい「重いものは持ってない」と云われます。
実は、物を持とうとしてかがんだ瞬間が一番危険なのです。
これは自分の体験談ですが、背中が丸まった姿勢でくしゃみをした時にぎっくり腰になりました。その時に気づいたのですが、筋肉が瞬間的に引き延ばされた時が一番発症しやすいのです。
腰だけではなく「寝違い」やスポーツ時の「肉離れ」もぎっくり腰と同じ現象で、筋肉が外力により必要以上に引き延ばされた結果です。
痛めやすい場所
1.仙腸関節の損傷(捻挫)
この場合は、一般的に云うところの腰というより臀部(尻えくぼのあたり)に痛みがでます。
また、仙腸関節の損傷は骨盤の上にある背筋 (専門的には脊柱起立筋、腰方形筋などと呼ばれる筋です)を緊張させて痛みを出させたり、太もも後ろ側やふくらはぎに痛み (専門的には関連痛と呼ばれます)やしびれを出させることもあります。
2.腰椎の損傷
この場合は、骨盤の上にある腰椎(背骨)、したがって腰の中心部が痛みます。
また背骨沿いの背筋(脊柱起立筋や回旋筋などです)を 緊張させて痛みを出させたり、下肢に痛み(専門的には関連痛の場合と根性痛の両方があります)を出させたりします。
3.背筋や筋膜(筋を包んでいる線維性の膜)の損傷
この場合は傷害された背筋やその筋膜が一番痛むことになりますが、私たちの見る限り腰椎や仙腸関節にまったく問題がないのに 筋・筋膜を損傷した例をほとんど知りません。
大なり小なり、1あるいは2が合併しているものです 。
(これはあくまでも私たちの考え方であり、現代医学で認められた考え方ではありません)
ぎっくり腰になってしまったけど、どうすればいいの?
最初の3日間をうまく乗り切ることが大切です。
最初に無理すれば、結局は痛みが増して、長く仕事や学校を休むことになります。
「ぎっくり腰になったら休む」 勇気が、早い社会復帰につながります。
家庭での対処法
ここでは自宅での対処法をお話しましょう。
もちろん専門家に診てもらうのが一番確実ですし、間違いのない方法ですが、 何らかの都合でそれができない場合のアドバイスです。
あくまでも自己責任で実施してください。(文章でお伝えできる限界とお考えください)
氷水で冷やす
温めてはだめです。ですからお風呂もやめておくのが無難です。
ぎっくり腰は捻挫や肉離れのようなものと考えていただければ、 おのずと冷やすことが大切なのはわかっていただけると思います。
冷やすことがなぜ良くて、温めるとなぜいけないのかの詳しい説明は別の機会にいたします。
ぎっくり腰は炎症ですから熱を発生していますので冷やすと、今は云っておくにとどめます。
冷やす方法
氷のう(ビニール袋で代用できます)に氷と水(9:1の割合)を入れ、患部に20〜30分あてます。
できるだけ痛みの少ない姿勢で氷のうをあててください。
氷のうをあてる姿勢に無理があると逆効果になってしまいますから注意です。さらしなどで腰に縛り付けるのがいいでしょう。
これを2〜3時間置きに一日3回程度できれば、より早く痛みが減るでしょう。
3日間は続けてください。
楽な姿勢で休んでください
ストレッチや揉んだりは絶対にいけません。
前述したようにぎっくり腰は筋肉を急激に引き延ばした時に起こるのですからストレッチは禁忌です。また炎症があるのですから揉むのも当然悪化を招きます。
腰痛体操などをぎっくり腰の時にやってしまうと、それこそ「腰痛になる体操」となってしまいます。
お尻に痛みがでるタイプのぎっくり腰(仙腸関節の損傷タイプ)は、痛い側を下にした方が楽な場合が多いものですから試してみてください。
さらしやゴムベルトを使う
お尻の痛いタイプは、骨盤をさらしやゴムベルトで締めると仙腸関節が早く治ります。
腰椎や背筋の痛みがつよい場合はさらしを巻くのがいいでしょう。
テーピングができる人が周りにいるならその人にお願いしてもいいでしょう。
以上がもっとも重要なアドバイスです。
ぎっくり腰へのさらなるアドバイス
身動きがまったくできない場合は、上の3原則でしばらく辛抱してください。
大抵は一日我慢していれば身動きぐらいできるようになります。 かなり重症でも2〜3日でなんとか身動きできるようになるはずです。
そうならなかったらどうするか、 この場合は迷わず専門家を受診してください。
身動き(寝返りや這い這いぐらいができる状態です)できるようになったら、次にすることは「ぎっくり腰体操」です。
ぎっくり腰体操
第1段階:四つん這いになります。
第2段階:四つん這いのまま、手とひざの位置を動かさずに、体を前後にゆすります。
第3段階:四つん這いのまま、左右にお尻をふります。
※注意:急激に動かすと痛みがぶり返すことがありますので、ゆっくりと動かして下さい。
第4段階:四つん這いでゆっくり歩きます。
第5段階:柱などにつかまりながらゆっくり立ちます。
第6段階:まっすぐ立てるようになったら、柱につかまったまま上半身を垂直に保ち、膝の軽く曲げ伸ばしをします。
第7段階:そろそろと歩きます。
第7段階までくれば、後は、中腰やくしゃみ、トイレや洗面などの動作で再度傷めることのないように注意して生活していれば、日に日に回復していくことでしょう。