膝痛の方を触診すると、膝の裏にふくらみを感じる事がある。これをベーカー膿包または膿腫というのだが、原因ははっきりしておらず、リウマチとか変形性膝関節症、膝関節の使い過ぎと言われている。
五十代から七十代に多く観られると言うが、若い方でも相当数いると思われる。症状は膝関節の痛みや窮屈感があり、正座をすると窮屈感が顕著に現れる。以前施療していたクライアントさんは病院で検査を勧めたが、ベーカー膿腫に間違いはないが一旦様子を見ると言われたと、施療に戻って来た。その後引っ越されたため施療は終了となったが、自宅でのアイシングを続けてもらう様に指示した。
先日書いた様に寛骨の前方変位があると同側の股関節の内旋変位が起こり、同側の膝関節の屈曲変位が起きやすくなる。この状態は膝関節にとり非常に悪い形であって、大腿骨と脛骨の当たりが悪くなって炎症を引き起こす事になり、膝は冷やす事で炎症を抑えるために水を溜める事になる。 水が溜まり続けると膝化膿包にも水が流れ込んで、膝の裏に腫脹が起こる。
気がつかない方もいるのだが、うつ伏せで膝を深く曲げた時の膝の曲がりにくさを指摘すると納得してもらえた事もあった。 リウマチ等の病理が無ければ、やはりアイシングが一番よい処方となる。10分か15分くらいを毎日2回から3回続けていくと10日から2週間くらいで落ち着いてくるのが普通であり、治まらなくてもアイシングは続けていく方がよい。もちろん、骨盤や股関節と膝関節の調整は重要である。
写真が小さく解りづらいが左右の脚を見比べると左脚の外側がやや細くなっているのが解るだろうか。さらに右脚より左脚がやや内側を向いている。現在、左側坐骨神経痛と股関節痛で施療中のクライアントさんなのだが、左の膝関節もやや大きく見えるのは水が溜まっている状態である。
自身の体験も含めて現在腰痛と股関節痛を施療中のクライアントさん3名を観察すると、股関節痛のある側の膝関節にも水が溜まっている事が解った。膝関節の検査をすると関節の動に制限がある。 そして、何より股関節痛のある側の外側広筋(大腿外側の筋肉)の萎縮が観られる。
今までも同じ事が観察されたが、自身も左膝関節を痛めた時に左外側広筋の萎縮があり原因が解らないでいたが、整形外科医の書いた本を読み、筋萎縮が起こる事に納得ができた。
その本によると、『痛めた膝は関節を守るため筋肉を萎縮させる。』と、書かれていた。自身が膝を痛めた時には特に腰痛があるわけでもなく、神経障害があるわけでもないのに、なぜ筋萎縮が起きたのか理解できずにいたのだが、実際にアイシングして腫脹が治まり痛みが引いてくると、自然にもとの筋量に戻ったのだ。
この事を考えると、一般的な処方として、膝関節の痛みには大腿四頭筋を鍛えると言われているが、膝自身が膝関節を休ませるために筋萎縮を起こしているのなら、膝痛の患者さんに筋トレをさせるのは間違っているのではないだろうか。 前回のブログでは代謝アップのために筋量を増やすと言う事に疑問をていしたが、関節の障害が治まると筋萎縮も治まり元に戻る事を考えると、やはり、筋トレより現在ついている筋肉をよく使う事の方が大事で、関節の調整をすると言う事は非常に重要な事と思える。
自宅で膝関節を調整する方法
1.スクワットを行う。これは大腿四頭筋の筋トレと言うより膝関節の屈伸により関節面を密着させる事が意義となる。どこかに掴まってもかまわないので、痛みが出ない程度で屈伸を10から15回程度行う。
2.スクワットをした後には必ずアイシングを行う事。時期が時期なのでアイシングは辛いかもしれないが、やはり、炎症のため腫脹しているのだからしっかりアイシングする事をお勧めする。
参考文献 『考える膝』全日本病院出版会 著者 井原秀俊(整形外科医)
ダイエットや関節を保護するのに筋肉をつける事が大事と言われているのだが、本当に筋肉量を増やす事が大事なのだろうか? ダイエットでは筋肉量を増やして代謝を上げるとよいと言っているが、確かに筋肉量が多ければ代謝が上がるのは事実だろうが、この事を自動車に例えると、すぐ近くのスーパーに行くのに原付で行くのか大排気量の自動車で行くのかと考え方が似ていると思う。
近くのスーパーに行くのにそれほど排気量が無くても問題は無い。レースに出るなら大排気量の車が必要になるだろう。人に置き換えると普段の生活ではそれほど筋力は必要は無く、競技に出る様な方たちはやはり筋力が必要になる。と言う事になる。競技などしなくても筋力、筋量が必要ならヒトは何もしなくてももっと筋肉がついている様に思う。トレーニングをして筋肉を増やして、代謝を上げると言うのは無駄しているのではないかと思う。少ない燃料で多くの仕事をすると言うのが効率が良い。と言う事であるならヒトも食事量が少なく、普通の仕事ができる方がより効率が良いではないだろうか。
ちょっと乱暴な考え方だろうか。 しかし、筋量を増やすには、やはり筋トレが必要であり、筋量を維持するにはトレーニングの継続をする事が必要である。一度筋肉をつけてもトレーニングを止めると元に戻ってしまう。例えば、頸椎の痛みで腕神経叢に牽引がかかった様な場合、腕の筋肉が萎縮を起こす事がある。しかし、腕の神経の負荷が無くなると、筋肉の萎縮は無くなりトレーニングをしなくても筋量は元に戻る。
トレーニングをしなければトレーニング前の筋量になるし、神経障害などで萎縮した筋肉も障害が無くなると元の筋量に戻るのであれば、今現在ついている筋量が個々人の必要量なのであって、競技の様に筋力を使わないのであれば、必要以上の筋肉はいらないのではないかと考えている。
トレーニングをするよりも、今ついている筋肉をよく使う事が大事なのではないだろうか。ちょっとした距離なら交通機関を使わず徒歩で移動する。エレベーターやエスカレーターに乗らず階段を使う。と言う様な事は非常に大事であろう。
以前いらしたお年寄りに「よく歩きましょうね」と言った時にその方は、「嫌です。町内で年寄りが集まって体操をしているから、歩かなくても大丈夫」と言っていた。 確かに体操をしているのなら身体を使っているしたいした問題はないだろうが、人間は直立二足歩行が原則であり、二足歩行をする事で骨盤の動きが正常になり、全体の動きが正常に保たれるのである。
原則を無視してトレーニングで筋量を増やすと言う事には疑問を感じる。 ただし、決して筋トレが悪いとか筋肉がいらないと言っているわけではないと言う事をご理解願いたい。